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コラム:起業のすゝめ( IT・BPO企業編)

現在日本では、フィリピン語学留学が流行っている。オンラインで英会話を習った後、実際にフィリピンへ留学し、語学学校で英語を学ぶ。英語を学びながら現地で生活をしていくうちにフィリピンが気に入り、その可能性を感じて起業を考える人も多いと聞く。あるいはフィリピンに視察や旅行に行った際に、ここでビジネスをしたら面白いんじゃないかと考える人も少なくはないようだ。確かに、フィリピンには発展途上国独特の熱気や活気があり、現地の人々の生活を目の当たりにしてそのように感じるのも頷ける。

 

好調なASEAN経済を背景に、一時はアジアのお荷物とまで言われたフィリピンは、安定成長を維持している。フィリピン経済は2012年以降、ASEAN主要諸国の中でもトップクラスの経済成長率である。特に国民の1割、1000万人以上に上るといわれる海外フィリピン人労働者(OFW)からの送金は国内の需要面で景気拡大を牽引しており、また、経済の発展に伴い、中間所得者層が増えたことも、この好景気の促進材料であろう。2014年には公式に人口が1億人を突破、人口構造もきれいなピラミッド型をしているため、今後の更なる発展への期待は大きい。

 

本コラムでは、フィリピンで起業を検討される方々が、複雑な手続きや制度を理解し、円滑に起業準備を進められるよう、また、少しでも事業成功の確率を高められるように、「フィリピン起業のすゝめ」と題して、起業に関する基礎知識を共有したい。

 

尚、本稿では、個人、あるいは少人数での小規模スタートアップで、IT・BPO系企業を設立しようと検討されている方々向けに執筆させて頂いた。

 

其の一、フィリピンで会社を設立する流れを知る

 

フィリピンで起業するにあたり、まず初めに必要なのは「会社設立」である。ここでの「会社設立」とは株式会社の設立を指し、「登記から事業開始までの具体的なプロセス」との定義をさせて頂く。会社設立の大まかな流れは、下記の通りである。

 

SEC(証券取引委員会)への登記
Mayor’s permit(営業許可書)の取得
BIR(内国歳入庁/税務署)への登録

 

また、会社の形態は下記の3つとなる。

 

現地法人
支店
駐在事務所

 

個人あるいは少人数でのIT/BPO企業の場合、そのほとんどが、上記のプロセスで会社設立手続きを行い、現地法人を設立することになるが、会社設立のプロセスを進めるには下記の選択肢がある。

 

自ら(あるいは友人)が手続きを行う
プロのコンサルティング会社に依頼する
現地の弁護士等に依頼する

 

自ら(あるいは友人等)が上記の会社設立プロセス手続きを行うことも可能であるが、慣れない作業と煩雑なプロセスにかなりの労力が必要であるため、余程時間にゆとりがあるか、あるいはフィリピンで会社設立のコンサルティング業務を考えている方でもなければ、予算重視なら3番、安心を重視するなら2番をおすすめしたい。

 

其の二、外資100%で会社をつくる

 

IT/BPO企業として現地法人を設立する場合、フィリピンでは、条件さえ満たせば外資100%での会社設立が可能となる。その条件とは、1.「輸出型企業」であること、2.ネガティブリストに掲載されていないこととなる。「輸出型企業」とは現地法人の売上の6割以上がフィリピン国外からであるということ。そして、「ネガティブリスト」に掲載されていない、とは、国内の産業保護の観点から、外国資本が0%、20%・25%・30%・40%以下と制限されていない産業であることを意味する。ネガティブリストは順次更新されているので会社設立前に事前チェックすることを忘れずにいて欲しい。

 

外国資本100%の優位性

「外資100%で起業する」とは、フィリピン資本を入れずに外国資本のみで会社を設立することであり、会社の経営自由度が保証されているということにもなる。もちろん現地法人であるのでフィリピンの法律に基づき会社を経営していくことになるのだが、その意思決定の自由度は、外資出資制限がある場合よりはるかに高い。ただフィリピン国内の事業を中心にするIT/BPO企業の場合、売上高の割合制限があるので、ご留意いただきたい。

 

其の三、投資・税制等の優遇措置について知る

 

会社設立の流れと、外国資本の優位性について理解した上で、次は投資や税制等の優遇措置について話を進めていく。日本でも会社を設立するときに、各自治体が補助金や各種優遇制度を設けているように、フィリピンにおいても、各機関が外国企業誘致のために独自の優遇措置を設けている。
代表的なのがPEZA(フィリピン経済特区庁)とBOI(投資委員会)である。PEZAがフィリピン各地域に位置する公営、および民営の輸出加工区(ECOZONE)に投資する企業向けに各種優遇措置を設けているのに対し、BOIは、毎年発表される投資優先計画(IPP:Investments Priorities Plan)で指定された業種や事業に投資する企業に、各種優遇措置を付与している。

 

PEZA・BOIの優位性

フィリピンでIT/BPO企業として起業する場合、条件さえ合えば、PEZA・BOI等の投資制度を活用してもらいたい。これらの恩恵にあずかるためには諸要件を満たす必要があり、基本的には輸出企業であることが前提である。が、実はBPOやIT企業が海外向けにサービスを行っている場合は、インターネットを介した労働力の輸出とみなされ、輸出企業の範疇となる。この場合、売上の70%以上が輸出(海外からの収入)によるものであれば優遇措置の対象となる。優遇措置の内容は、法人所得税の免除や外国人の雇用規制の緩和等であるが、いずれにせよ、これらの投資・税制等の優遇措置を知り、活用することでスタートアップを円滑に進めてもらいたい。

 

其の四、SEC(証券取引委員会)への登録申請
この項では、会社設立、登記の進め方について述べていきたいと思う。

 

会社名の登録

まず初めにすることは、会社名の予約と決定である。これはSEC内のSEC i-Registerから行うことが可能である。注意事項としては、登記する予定の名前が既に使用されている場合、登記はできないこと、予約には有効期限があることである。また、フィリピンでは自治体が違っても同一の登記名は許可されない。そのため、複数の社名候補を準備しておくとスムーズである。

 

会社住所・オフィスの契約

次に、住所・オフィスの契約について話を進めていく。会社を登記するにあたって、登記する住所が必要であるからだ。めぼしい場所を見つけたらオーナーと契約を進めてほしい。ただこの際、必ずと言っていいほど、オフィス契約の必要書類としてSECの登記書を求められる。登記をするために、オフィスの契約書が必要であるという旨をしっかりとオーナーに伝えて頂きたい。あるいや、レンタルオフィスや住所貸のサービスを利用してもよいだろう。但し、前項にて述べたが、投資優遇措置を検討しているのであれば、その条件(PEZAビル内にオフィスを借りる)等、考慮して頂きたい。

 

発起人、株式保有割合、資本金額、定款等の決定

上記まで進めると、SECへの提出書類の作成準備に取り掛かる。必要なのは、上記の情報以外に、発起人、株式保有割合、資本金額の決定、定款などの情報である。発起人については、5名以上(15名未満)の自然人(法人不可)、且つ一人1株以上を持つ必要がある。また発起人は過半数がフィリピン在住であることが条件になっているので気をつけて頂きたい。また、取締役及び役員を選任する必要もある。取締役に関しては、大抵は発起人がそのまま取締役になるケースが一般的である。役員は財務、セクレタリーを選任しなければならない。
IT/BPO企業で外国資本100%の企業の場合、議長、財務は外国人でも可能である。しかしセクレタリーは会社法の規定より、フィリピン人を任命する必要があるのでご注意頂きたい。またセクレタリーは会社で非常に重要な役割を担っており、重要書類の作成や署名等を行うため、誰をこのポジションにするのかは非常に重要な要素となる。慎重に決定して頂きたい。信頼のおけるフィリピン人が見つからない場合は弁護士に依頼するという方法もある。定款の作成等は、フォーマットをSECにて購入することが可能である。

 

資本金払込口座(TITF口座)の開設

提出書類の準備と平行して準備しないければならない作業がある。それはTITF口座と呼ばれる口座の開設と資本金の払込である。会社申請に関して、資本金が支払われたという証明書が必要になるからである。フィリピンの地方都市であるとTITF口座自体を知らない銀行の行員もいるが、会社設立のために資本金の支払が必要なため、口座を開きたい旨をしっかりと伝えるとよいだろう。

 

以上、SEC(証券取引委員会)の申請に必要な書類が準備できたら、弁護士に不備等を確認してもらい、書類を公正手続きをして、提出すればよい。ちなみに、この公正手続きに関しては、フィリピンでは、notarize(ノータライズ) という言葉が頻繁に使用される。これは契約書等の書類の公正手続きをする、公正証書にするという意味である。契約書等の書類も署名して完了でなく、この公正証書にするところまでが必要である、ということを知っておいて頂きたい。

 

其の五、Mayor’s(Business) permit(営業許可書)の取得

 

SEC(証券取引委員会)の申請が終了し、承認された時点で、会社が設立されたことになる。しかしながら、申請された会社が事業を開始するためには、バランガイ(行政の最小単位)と地方自治体(市町村)への登録を行い、営業許可書を取得しなければならない。これは事務所を開所した住所が存在するバランガイと、地方自治体の両方で行う必要がある。特に営業許可書は毎年、年初に更新が必要であり、許可されている事業内容が証明書に書き込まれるため、しっかりと確認を行ってもらいたい。

尚、弊社が位置するダバオ市では、必要書類さえ揃っていれば72時間以内に営業許可書を発行しなければならない、という条例が存在する。また、それ以上時間が掛かる場合は異議申し立ても可能であるので、非常に手続きはスムーズである。

 

其の六、BIR内国歳入庁 / 税務署への登録

 

会社を登記し、事業を始めるまでに必要な最後の手続きは、BIR(内国歳入庁)での税金に関する手続きである。ここで会社の納税者識別番号(TIN:Taxpayer Identification Number)の発行や各種登録手続きをする必要がある。其の三、にてPEZA・BOI等の有利な条件の投資制度をお伝えしたが、それらの制度を利用する場合、BIRにも申請をする必要がある。BIRでの申請が承認されて初めて、これらの制度の恩恵にあずかることができる。税制の仕組みは非常に複雑であるため、会計を専門とする会社か、あるいは公認会計士(CPA:Certified Public Accountant)に依頼するのが良いだろう。

 

以上、其の一から其の六まで、フィリピンにおける企業設立の流れとともに、具体的な手順について述べた。フィリピンにおいては、政府が投資優遇措置と規制緩和措置を軸に、外資投資を積極的に誘致している。そのため投資優遇措置が非常に充実しており、特にIT/BPO企業においては、外国資本100%での起業が可能であるため、企業乗っ取り等の経営リスクは少ない。また、世界第三位の英語圏として、英語を使用する人材が豊富であり、地理的にも日本の隣国であるというメリットがある。しかしながら、フィリピンではそのプロセスの煩雑さから、登記や設立段階がうまく進まず膨大な時間と労力をムダにするケースも少なくない。会社設立はあくまでスタートラインに立つための準備に過ぎないが、その準備は慎重に、かつ十分に行っていただきたい。

 

最後に、本稿の内容が少しでも、フィリピンで起業を考える方々のお役に立てれば幸いである。

 

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